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脂質Lipid

肥満や動脈硬化の原因といった悪者のイメージが強い脂質ですが、最も大きなエネルギー源であり、ホルモンや細胞膜の材料になったり、身体を保護するなどの重要な働きを担っています。

脂質

脂質とは

脂質は、構造や性質により、働きが大きく異なります。
・エネルギー源として貯蔵する中性脂肪(トリアシルグリセロール)
・ホルモンや胆汁酸、細胞膜の原料となるコレステロールやリン脂質
などが代表的です。重要な働きを持つ一方、過剰に摂り過ぎると体脂肪として蓄積され、肥満や動脈硬化、脂質異常症などの原因になります。

脂質の働き

最も大きなエネルギー源

1gあたり約9kcalのエネルギーを産生します。
炭水化物やたんぱく質の約2倍の産生量であり、効率の良いエネルギー源です。
糖質に比べてエネルギー産生のスピードは遅く、糖質は短時間で強度のある運動に利用されるのに対し、脂質は長時間の負荷が低い運動に利用されます。 また、糖質から作るグリコーゲンは、約1日分のエネルギーしか貯蓄できませんが、脂質は、糖質の約6倍、数ヶ月分のエネルギーを貯蓄することができます。皮下脂肪として貯蓄された脂質は、臓器を保護したり、体温を保つことにも役立ちます。

ホルモンとして身体を調整する

血糖値や電解質(イオン)、免疫反応の調整に関与する副腎皮質ホルモン、精巣や卵巣から分泌される性ホルモンといったステロイドホルモンの原料になります。
これらのホルモンの分泌が不足すると、倦怠感を感じたり、喘息や肌の炎症などの免疫機能の症状を抑えることができなくなります。また、女性の場合は、性ホルモンのバランスが崩れ、生理不順が起きやすくなります。

きれいな肌を保つ

体内を構成する37兆個の細胞は、全てが細胞膜に覆われています。
細胞膜は、細胞を保護するだけではなく、必要な物質を分別して取り入れたり、身体の情報を細胞に伝える役割を持っています。脂質は、細胞膜の一部として、細胞の内側と外側を分離し、細胞膜が破れてしまった際には膜を作り、細胞が機能しなくなるのを防ぎます。
肌が水を保持できるのも、脂質の水と油をなじませる作用のお陰です。脂質が減少すると、バリア効果が不足し、肌荒れを起こしたり、乾燥しやすくなります。

脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収を促す

脂溶性ビタミンは、水に溶けないため、吸収しにくい栄養素です。脂質から作られる胆汁酸や他の脂質物質と合わせて吸収するこことで、吸収率が大幅にアップします。
また、コレステロールは、日光に当たることでビタミンDの前駆体に変わります。

脂肪酸の種類

脂質は、脂肪酸の構造により、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。
飽和脂肪酸は、肉や乳製品などの動物性食品に多く含まれ、常温で固まるものが多いのが特徴です。エネルギーのほか、細胞膜、中性脂肪、コレステロールの原料になります。
増えすぎると、悪玉コレステロールを増加させ、血液の粘度が高まり、動脈硬化のリスクが高まりますので、取り過ぎには注意が必要です。
不飽和脂肪酸は、植物性食品や魚に多く含まれ、常温では液体の脂質です。善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす働きを持ちます。ただし、n-6系脂肪酸は、取り過ぎると善玉コレステロールまで減少させてしまう可能性があるので注意が必要です。
体内で作ることができず、食品から摂る必要がある脂質を必須脂肪酸と言います。リノール酸やα-リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸が当てはまり、皮膚炎や動脈硬化の予防や脂肪燃焼効果が期待できます。

飽和脂肪酸パルミチン酸・ステアリン酸・ミリスチン酸・ラウリン酸ラード、バター、牛脂
中鎖脂肪酸ココナッツオイル、パームオイル
不飽和脂肪酸一価不飽和脂肪酸n-9系脂肪酸オレイン酸オリーブオイル、キャノーラ油
米ぬか油、マカダミアナッツ
多価不飽和脂肪酸n-6系脂肪酸リノール酸、γ-リノレン酸
アラキドン酸
ごま油、コーン油、大豆油
グレープシードオイル、レバー
n-3系脂肪酸DHA、EPA
α-リノレン酸
魚に含まれる油
エゴマ油、亜麻仁油

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脂質を効率よく摂るために

食事摂取基準(厚生労働省)では、18歳以上の脂質の目標量は、男性・女性共に1日の摂取エネルギーの20~30%としていますが、国民健康・栄養調査(厚生労働省)では、脂質の割合が摂取エネルギーの30%を超える人が男性35.3%、女性42.8%と非常に多いことが分かっています。
また、必須脂肪酸であるn-3系脂肪酸の18歳以上の目安量は、男性2.0~2.2g、女性1.6~2.0g、n-6系脂肪酸の目安量は、男性8.0~11.0g、女性7.0~8.0gとしています。
脂質は消化管に長く留まるため、満腹感を感じやすくなります。ダイエットで脂質を控え過ぎると満足感を得られずに、かえって食べ過ぎてしまう危険もありますので、量と質の両方に気をつけながら脂質を摂りましょう。

食 材n-3系脂肪酸n-6系脂肪酸
サバ缶(1/2缶)2.74g0.54g
アマニ油(小さじ1)2.27g0.58g
エゴマ油(小さじ1)2.33g0.49g
鮭の切り身(1切)0.92g0.07g
くるみ (5粒)0.90g4.13g
ごま(小さじ1)0g0.54g

必須脂肪酸の多い食品

過剰摂取について

脂質の耐用上限量は設定していませんが、脂質異常症や循環器疾患などの生活習慣病を予防するため、飽和脂肪酸は1日の摂取エネルギーの7%以下、コレステロールは200 mg未満/日にすることが望ましいとしています。

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