地球上に多く存在し、様々な道具に利用されてきた金属です。赤血球の構成成分であり、エネルギー生成に必要な酸素を全身の細胞に届ける働きに関与しています。
赤血球のヘモグロビンや酵素の構成成分として利用される必須ミネラルです。 体内では4g程度を含有し、70%は血液や筋肉に存在しており、残りは、肝臓、脾臓、骨髄に含まれています。 鉄は存在する組織により、形や働きが異なります。赤血球ではヘモグロビン、筋肉ではミオグロビンといった機能鉄として存在し、全身の細胞に酸素を届けます。一方、肝臓・脾臓・骨髄では主にフィリチンとして存在し、機能鉄が不足した時のストックとして貯められています。
赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分です。へモグロビンは、鉄を材料として作られる色素ヘムとたんぱく質であるグロビンが結合して作られています。血液が赤いのは、ヘモグロビンに含まれる色素ヘムによるものです。 ヘモグロビンは、呼吸で取り込んだ酸素と結合し、全身の細胞に酸素を届けます。届けた酸素は、細胞の活動のためのエネルギー源として利用されます。 赤血球は、120日で新しく作り替えられており、ヘモグロビンに利用していた鉄は、新しいヘモグロビンを作るために、一部を除き再度利用されます。成人男性でおおよそ1日に約1㎎の鉄が失われ、失われた分は食品から摂取した鉄を利用します。鉄の吸収率は、食品や阻害要因により大きく異なりますが、おおむね15%程度です。そのため、必要量が1㎎であっても、7㎎弱の鉄を食品から摂取する必要があります。
細胞に酸素を届ける働きを持つのが、鉄とタンパク質で合成される赤血球のヘモグロビンです。鉄が不足するとヘモグロビンを十分に合成することができないため、全身の細胞にエネルギー源である酸素を運ぶことができません。この鉄不足によって起こる貧血を鉄欠乏性貧血と言い、めまいや頭痛を感じたり、筋力の低下や疲労感を感じやすくなります。鉄欠乏性貧血は、最も多い貧血です。健康診断のヘモグロビン値は正常であっても、鉄が不足している潜在性鉄欠乏性貧血になる場合もあります。特に女性は月経で鉄が不足しやすいため、疲れているなと感じた時は貧血を疑うことも覚えておきましょう。
食事摂取基準(厚生労働省)では、18歳以上の推奨量を男性7.0~7.5㎎/日、女性6.0~6.5㎎/日(月経時は、10.5~11.0㎎/日)としています。国民健康・栄養調査(厚生労働省)では、20歳以上の摂取平均値は男性8.15mg/日、女性7.32mg/日です。 鉄は、レバーなどの動物性食品に含まれるヘム鉄と、ホウレン草やひじきなどの植物性食品に含まれる非ヘム鉄に分けられます。2価鉄であるヘム鉄の吸収率は50%に対し、3価鉄の非ヘム鉄の吸収率は15%程度です。非ヘム鉄の3価鉄イオンを還元し、吸収率の高い2価イオンにすることができるビタミンCは、一緒に摂りたい栄養素の1つです。 鉄が多いと認知されているひじきは、鉄釜で茹でた場合は鉄が含まれますが、ステンレスなどの鍋を利用した場合は、残念ながら鉄の摂取は期待できません。
豚レバー(100g) | 13.0㎎ |
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鶏レバー(100g) | 9.0㎎ |
小松菜(小鉢1つ分) | 2.2㎎ |
納豆(1パック) | 1.7㎎ |
シジミ(味噌汁1杯分) | 0.7㎎ |
乾燥ひじき(5g) | 0.0㎎ |
鉄を含む主な食品
食事からの過剰摂取によって健康被害が生じる可能性は少ないですが、サプリメントや強化食品、貧血治療用の鉄製剤の不適切な利用により、嘔吐や慢性疾患の発症が報告されています。そのため、18歳以上の耐容上限量は、男性50㎎/日、女性40㎎/日としています。