ナトリウムは、人間が生きていく上で必要不可欠な栄養素です。主に塩素と結合した食塩の形で身体に取り入れています。
必須ミネラルの1つで、体液量やpHの調整、筋肉の収縮、神経の伝達などに関与しています。体内では100g程度のナトリウムを含有しており、2/3は血液や細胞間液に存在し、残りの1/3は骨に含まれます。
生命維持に非常に大切なミネラルですが、過剰に取り過ぎると高血圧、胃がんや食道がんなどの原因になります。
体液の水分量や浸透圧は、ナトリウム濃度により調整されます。
例えば、食塩を摂取して体内のナトリウム濃度が高くなると、口渇や水分排泄量の減少、ナトリウムが多く含まれる血液や細胞間液への水分の取り込みが行われます。これらの機能がうまく作用せず、ナトリウム濃度の高い状態が続くと嘔吐や吐き気、けいれんなどの症状が起きたり、重度な状態が続くと死に至る危険があります。
私たちの体液は、pH7.4の弱アルカリ性を保っており、±0.05と非常に狭い範囲内を保たないと細胞が機能できません。食事や激しい運動の後は身体が酸性に傾きやすく、大きく酸性に傾くと、嘔吐や吐き気、食欲不振、疲労など全身の細胞からSOSが発せられます。ナトリウムは、酸性に傾きそうな身体を中和し、pHの変化を防ぐ働きを持ちます。
筋肉細胞の外側に存在するナトリウムイオンが内側に移動した時に活動電位が発生し、筋肉を収縮します。神経伝達も同様に、神経細胞の外側からナトリウムイオンが内側に移動することで神経組織に電気信号を伝えます。
食塩と血圧の関係は一般的によく知られていますが、食塩を摂取した時の血圧の上がりやすさには、個人差があります。血圧の上昇は、食塩の摂取により血液中のナトリウム量が増え、濃度を元に戻そうと血液の水分量が増加することで起こります。
また、ナトリウムによって活性される交感神経が血管を収縮することも、血圧を上げる要因です。
現在、食塩摂取で血圧が上がりやすい体質かどうかの明確な検査や診断基準は、確定されていません。高血圧は、塩分以外の要因も多数あることから、減塩と併せて他の要因も探っていくことが大切です。
複数の研究から食塩を1g/日減らすと、収縮期血圧が約1㎜Hg強ほど低下することが報告されています。ナトリウムを排出するカリウムの摂取も重要であり、ナトリウム/カリウムの摂取比を下げることが高血圧予防に有効です。
食事摂取基準(厚生労働省)では、ナトリウムの多くを食塩で摂取していることから、食塩相当量として表示しています。
18歳以上の食塩の目標量は、男性7.5㎎/日未満、女性6.5㎎/日であり、国民健康・栄養調査(厚生労働省)の20歳以上の摂取平均値の男性10.9㎎/日、女性9.25㎎/日と比べると、摂り過ぎていることが分かります。
普段の食事から、漬物や汁物の量を減らしたり、出汁や香辛料を取り入れるなどの工夫をして、塩分を控えるよう心がけていきましょう。
ナトリウム量と食塩相当量の算出法は、下記の式の通りです。
食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×2.54
食塩(小さじ1) | 6.0㎎ |
---|---|
しょう油(小さじ1) | 0.9㎎ |
味噌(大さじ1) | 0.4㎎ |
中濃ソース (小さじ1) | 0.3㎎ |
梅干し(1個) | 1.8㎎ |
明太子(1/2個) | 1.7㎎ |
ナトリウムを含む主な食品(食塩相当量)
ナトリウムを過剰に摂取し続けることで、高血圧や胃がんのリスクが高まることが分かっています。そのため、食事摂取基準(厚生労働省)では、ナトリウム摂取量を目標量として設定しています。