世界最初のビタミンの発見は、ビタミンB1を見つけた日本人でした。
日本語での論文発表だったため、命名は認められませんでしたが、国民病と恐れられていた「脚気」の原因追及に成功しています。
ビタミンB群とは、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類の総称です。
炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素の代謝をサポートする役割を持っています。ビタミンB群は、お互いに補いながら作用しているため、不足することがないようバランス良く摂取することが大切です。
体内に取り入れられた糖質は、ブドウ糖、ピルビン酸と変換され、最終的にミトコンドリアに入り、身体を動かすのに必要なエネルギーの素(ATP)を産生します。
糖質がエネルギーの生産工場であるミトコンドリアに入るためには、ビタミンB1が酵素をサポートしなくてはいけません。ビタミンB1が不足するとATPに変換されず、ピルビン酸の状態で溜まり、乳酸に変わります。乳酸は疲労物質の直接の原因ではありませんが、結果的に疲労感・倦怠感を感じます。疲れを感じるときはビタミンB1不足が多いと言われています。また、糖質をスムーズにエネルギーに変換していかないと脂質に変換され、肝臓に蓄えられてしまいます。
脳は、身体全体のエネルギー(基礎代謝量)の約20%を消費しています。エネルギーの約2割が優先的に脳に運ばれます。
脳のエネルギー源の大部分はブドウ糖のため、糖質代謝に関与するビタミンB1が不足すると脳に充分なエネルギーを送ることができません。エネルギー不足は、神経系にも影響を及ぼし、集中力の低下や精神不安定を招くだけでなく、長期的に不足すると食欲不振や意識障害などを引き起こす恐れがあります。
脂質のエネルギー産生時に重要な栄養素です。
体内での脂肪酸がアセチルCOAになるために活用され、その後のクエン回路でも利用されます。ビタミンB2が不足すると、脂肪がうまく代謝できず、身体に蓄積しやすくなります。
皮膚、髪、爪などの細胞の合成の手助けをします。皮膚炎、口内炎や口の端が切れる口角炎、目の疲れや充血、白内障といった症状を予防するためにも十分なビタミンB2が必要です。
たんぱく質をアミノ酸に変換する酵素や分解したアミノ酸を新しく組み替える酵素のサポートをしています。皮膚、抗体や神経伝達物質の合成にも大切な栄養素です。
セロトニンやノルアドレナリン、GABA(γ-アミノ酪酸)などの神経伝達物質の合成に関与しています。神経伝達物質が適切に分泌されることで心の安定を保つことができます。また、女性の場合、PMS(月経前症候群)による頭痛や精神不安などの軽減に役立ちます。
私たちの体内は、常に新しい細胞に入れ替わっています。
新しい細胞を作るためには、遺伝情報を記録しているDNA、遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成に関わるRNAが必要です。ビタミンB12は、これらのDNA、RNAの合成に携わっています。
「造血ビタミン」と呼ばれるビタミンB12は、赤血球の合成で利用されます。ビタミンB12が不足すると、赤血球になる過程で行われる細胞分裂がうまくできず、正常な赤血球を作ることができない巨赤芽球性貧血を引き起こします。
パントテン酸は、ギリシャ語で「どこにでもある」という意味の通り、幅広い食品に含まれている栄養素です。コエンザイムA(COA)という酵素の構成成分として、エネルギー産生に関与しています。また、コルチゾールなどの副腎皮質ホルモン、アセチルコリンなどの神経伝達物質の合成を助け、ストレスから身体を守ります。
幅広い食品に含まれ、通常の食事で不足することはない栄養素です。
糖質などのエネルギー産生やアミノ酸の代謝・合成に関わっており、皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康維持に役立ちます。
平成30年度の国民健康・栄養調査(厚生労働省)では、男女共にビタミンB1とビタミンB6の摂取量が不足していることが分かっています。
ビタミンB6は、肉・魚・野菜と様々な食品に含まれているため、長期的な不足はあまり見られません。ビタミンB1はアルコールの代謝にも必要な栄養素です。スイーツが好きな方やアルコールをよく摂る方はビタミンB1を積極的に摂りましょう。
種 類 | 男 性 | 女 性 | 栄養素を含む食材 | |
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ビタミンB1 | 目安量 | 1.2~1.4㎎ | 0.9~1.1㎎ | 豚肉、うなぎ、玄米、大豆 |
ビタミンB2 | 推奨量 | 1.3~1.6㎎ | 1.0~1.2㎎ | レバー、うなぎ、乳製品 |
ビタミンB6 | 推奨量 | 1.4㎎ | 1.1㎎ | かつお、レバー、バナナ |
ビタミンB12 | 推奨量 | 2.4㎍ | 2.4㎍ | レバー、あさり、いわし |
パントテン酸 | 目安量 | 5~6㎎ | 5㎎ | レバー、しいたけ、納豆 |
ビオチン | 目安量 | 50㎍ | 50㎍ | レバー、大豆、落花生 |
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※目安量:科学的根拠が得られず算定できないが、一定の栄養状態を維持するのに十分と考えられる量
※推奨量:ほとんどの者(97〜 98%)が充足している量
ビタミンB群を過剰に摂取しても、尿と一緒に排出されるため、食品からの過剰摂取による健康被害は、ほとんどありません。
種 類 | 耐容上限量 | 過 剰 症 |
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ビタミンB1 | なし | 1日10gを摂取した結果、 不眠、速脈、いらだち、衰弱、かゆみが発生した報告がありますが、 上限量を算定できるほどのデータは不十分としています。 |
ビタミンB2 | なし | 報告なし |
ビタミンB6 | 男性55㎎/日 ・30~49歳は60㎎/日 ・65歳以上は50㎎/日 女性45㎎/日 ・65歳以上は40㎎/日 | 通常の食品からの過剰症の報告はありません。 ※数か月間、数g/日を摂取した場合、 末梢神経障害による「しびれ」などが起こる 感覚性ニューロパシーが報告されています。 |
ビタミンB12 | なし | 報告なし |
パントテン酸 | なし | 報告なし |
ビオチン | なし | 報告なし |
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